ハンセン病資料館の活動から考えたこと 佐川修さん(つづき)
(前回へのリンクです)
2004年リバティおおさか・インタビューより
“ハンセン病資料館の活動から考えたこと ”
佐川修さん
大谷藤郎先生がいたおかげで、「らい予防法」の廃止の時には、色んな方々からの支持を受けることが出来ました。
そして、1996年(65歳)、「らい予防法の廃止に関する法律」施行に漕ぎ着けました。
https://www.qab.co.jp/news/2011011324093.html
その、大谷藤郎先生が、熊本の「らい予防法違憲国家賠償訴訟(1998~2001)」で、原告団、被告団双方の証人として証言を頼まれ、両方とも引き受けて、証言をするために、熊本地裁へ行かれることになったのでした。
私も、東京の弁護士と一緒に傍聴に行きました。
そして、大谷藤郎先生が、午前中は原告団、午後は被告団の証言に立って
「自分は長年厚生省の役人をやってきたけれど はっきり言って 日本のハンセン病政策は重大な誤りを犯した。自分は良かれと思っていろいろやってみたが それはみんな小手先の事に過ぎなかった。本当に患者さんたちには申し訳なかった」
と言われて
2001年(70歳)5月11日に、あの画期的な熊本判決が出ました。
http://eikojuku.seesaa.net/article/210871545.html
ところが、マスコミは、
「これは当然、国が控訴して示談に持ち込むだろう」
という報道を盛んに流しました。
けれども、5月23日に小泉首相が、
「異例なことだが、控訴はしない」
と言い
それを聞いて私は、
「ああ、やっぱり良かった。これで大丈夫だ」
と思いました。
https://www.qab.co.jp/news/2011033026901.html
ハンセン資料館について、私が、他と少し違うなと思うことは、来館者の6割近くが、看護学校の生徒さんや 同和人権学習の生徒さん等の団体客であることです。
若い頃から、ハンセン病について知って下さることを嬉しく思います。
(一般、医療・看護学生編)佐川修さん講演/語り部活動 - YouTube
教育委員会の人達が、関心を持ってくれて、集会や外へ講演に行く機会、啓発の場をうんと与えられたことも、
ハンセン病資料館が出来てから、関心がうんと高まって、本を買って行ってくれる人が増えたことも、大変いいことだったと思います。
最後に、ちょっとアニメ監督の宮崎駿さんの事をお話ししたいと思います。
宮崎監督は当時、多摩全生園(ぜんしょうえん、東京都東村山市)の裏の方に住んでいて、ある時、監督が夜10時頃に、全生園の納骨堂で腕を組んで、考え事をしているのを、うちの入所者が見かけました。
その後、『もののけ姫』と更にそのあと『千と千尋の神隠し』が出来たのですが、映画を観た人が
“あの中にハンセン病の事が出ているよ”
と言いました。
それで、私が監督に
“映画を観たいけど、何とかなりませんか”
と言ったところ、フィルムを無料で貸して頂けたので、市民、学校の子ども達を呼んで、2回上映しました。
その、宮崎監督が、全生園の中を見て回り
“木造建築で 価値ある建物が幾つもある。そういう建物は将来、皆さんがいなくなっても 是非残して欲しい。その運動をするなら、私も応援します”
と、1千万円の寄付を申し出てくれたので、私たちも、確かにそうだということで着手しました。
宮崎監督は、映画を作る前、ハンセン病資料館にも立ち寄っていました。
いま、私は、
“やがて入所者が一人もいなくなるその時に 果たして皆さんは ハンセン病資料館に来てくれるだろうか”
と考えています。
いつまで 続くか分かりませんが、何とか皆さんに知って頂き、ハンセン病の歴史を正しく理解して頂き、二度と、他の障害者や 難病の人たちに 偏見や差別を起こさないための啓発の基地として、ハンセン病資料館が残っていくことを願います。
まぁ、全生園の入所者の平均年齢は、84.5歳なのですけれども、私は、73歳を過ぎたばかりなので(2004年当時)、もうちょっと頑張ってみようかなと、そう思っているところです。
学芸員さんたちには、私はいつも
“もう20年もしたら、日本のハンセン病患者は おそらく殆どいなくなるでしょう。でも、難病や 障害者や 老人の人たちは ずっと残っていきます。そういう人たちに 偏見や差別を起こさないよう ハンセン病の基地を教訓にして、ぜひ、ここで啓発活動をし続けてほしい”
ということをお願いしています。
まあ、どうかみなさんも、このハンセン病資料館が 私たちがいなくなっても ずっと残っていけるように、周りの人に
“一回行ってみなよ” とか
“昔、日本にはこういうハンセン病っていうのがあって 色んな闘いや 色んな事があったけど こういう 人権問題を話す啓発基地だから あすこへ一回 行ってみなよ”
とか言って勧めてくれれば、大変有難いと思います。
佐川修さん
1931 - 2018.1.24
(満86歳没)
<完>
お時間頂き、どうもありがとうございました🙇
柚子湯でほっこり♨ https://kichitarou.muragon.com/entry/41.html
今日も、皆様にとって、私にとって、素敵な一日となりますように‼