駒(馬)あつめ。で一席(前編)🐴
今年も“花菖蒲”の季節が巡ってきました.。名古屋出身東京在住の母(昭和13年生まれ、82)に同じ写真を送ったところ「お花有り難う。季節を忘れています。」と返信ありました。
(白鷺公園、堺市東区、2021年5月25日撮影)
母は、今日のお題との関連では、「昔…三河漫才が店先で簡単に、身振り手振りをして、ご祝儀を渡して、さよならです。お正月は店を閉めていましたが…(※母の両親は存命中、地下鉄名古屋駅の出入口のある通りで、ずっと下駄屋の店を開けておりました)。小学生でしたね。懐かしいですね。忘れていました。」と申しておりました。
本日は お忙しい中 御足労頂き ありがとうございます。今月は “駒(馬)あつめ” のお題で一席設けさせて頂きます。メニューは①前編で、昔のお正月の門付芸の“春駒”の唄を ご紹介させて頂き②続いて、“春駒”の少女、お志げの詩を 黙読して頂き③後編で、 “春駒”とお志げの詩の説明を、見よう見まねの門付芸の口上で私より説明させて頂き④参考資料のご案内もさせて頂いたあと⑤皆様とご一緒に “春駒”の動画(29秒)を観させて頂き、お開きにと考えております。それでは、何のこしらえの準備もなく、もてなしも至りませんが、どうぞごゆるりとおくつろぎ下さい。画像はムラゴンブログの皆様等から多数お借り致しました。
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“春駒”全歌詞
(『大衆芸能資料集成 第3巻』祝福芸Ⅲ・ 座敷芸・大道芸/広島県尾道市の春駒/小沢 昭一・高橋 秀雄編より)
シャンシャカ・シャカシャカ・テンツクテン
(※ささらや四つ竹の囃子の音)
♪ホレ お家の繁昌と祝いましょう
めでたや めでたや 春駒なんぞ
ビンタ
https://ameblo.jp/hirosimameibutu/entry-12384114137.html
(馬の頬肉の部位、タンパク質含有量16.9g/100g、広島市中区八丁堀)
(シャンシャカ・シャカシャカ・テンツクテン)
タン
ハイ 夢で見てさえ好いとや申す
タテガミ
https://amiroido.muragon.com/entry/1189.html
(広島県名物のコウネポン酢、馬のタテガミの部位)
これ 姉さん こなたは何の年よ 年も世もよし ほうばいよしよ
桜鍋
https://murauchi.info/weblog/2009/07/sakuranabe_umaniku.html
(山梨県の「馬肉鍋」)
ハイ 終りにゃ とりではなみのほうい
クラシタ
https://pu-3.com/?p=27926
これ 姉さん こなたは何の年よ みののこおりや おの山ぶしも
ロース
https://gurumebutyou.muragon.com/entry/1658.html(馬刺し、背中のお尻側の筋肉にあたる部位)
ハイ ほれたる小馬は さどよしふくま これ
ヒレ
https://gurumebutyou.muragon.com/entry/1658.html
(馬刺し、馬の真ん中の部位)
牡丹に唐獅子 竹に駒
カイノミ
https://munesada.com/2015/04/03/blog-5025
(カイノミの天婦羅。ヒレ肉の近くにあるわき腹の部位の馬肉)
駒の手綱をひろげてみたら
ラム・イチボ
https://munesada.com/2015/06/01/blog-5383
(イチボのわさびしょう油、馬のお尻の柔らかい赤身肉がラム・サシが入っていて柔らかい肉がイチボ)
ハイ 右の手綱が三尺三よ これ
ブリスケ
https://hitorimeshi.site/?p=4437(七輪焼き、ネックより下にある前脚の付け根の馬肉)
金銀こがねのだき枕 左の手綱も三尺三よ
内モモ・外モモ
http://basasiyukke.jugem.jp/?eid=1
(馬モモ肉のユッケ、馬の後ろ足の部位、お腹に近い側が内モモ)
ハイ 合わせ求めりゃ六尺六よ これ
サンカクシン(前バラ)
https://www.favy.jp/topics/14283
鶴と亀とが舞いを舞う 一舟乗るなら千里も走る
チョウチン(後バラ)
https://mokyulog.com/2020/03/18/roasthorse/
(チョウチンの塊肉焼き、馬のバラ肉の後ろの部位)
ハイ 二舟乗るなら 万里も走る これ
フタエゴ
https://gurumebutyou.muragon.com/entry/2056.html
(バラの下のあばらの近くにある馬肉)
ちちぶや小判がざらざらと 小馬はおなかりゃ めでとうおさめ
おめでとうございます♪
さいぼし
https://boulangere-sirius.muragon.com/entry/26.html
(馬刺しの燻製、江戸時代の史料「大福帳」に最初に登場しました)
松原在住のうわばみの義妹が、正月帰省の度に買うてきてくれました🎍
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“春駒”の少女、お志げの詩
「春駒」
みずた志げこ
「はよう おきんか!」
母の声にとびおきた
破れ戸のすきまから
ヒューン ヒューン
木枯らしが 音をたててふきこんでくる
弟らは まだ寝とるのに
うちゃあ そんばあじゃ・・・・・・
たのしいはずの正月三日
まっくらな山みちを行く
ギュッ! ギュッ!
しも柱をふむ音だけが
あとからついてくる
寂しゅうて 暗い夜空を見上げた
やけに星がこまかった
はよう 夜が明けてほしい
じゃけど・・・・・・
あかるうなったら
春駒を おどらにゃあいけん
それなら
いっそ夜があけんほうがええ
夜もしらじらとあけるころ
町はずれのこうまい社(やしろ)で
つめとうなったにぎりめし一つ
ふるえがとまらんかった
赤いしごきをたすきにかけて
あさぎいろの手拭いでほおかむり
「寒いか」
「足が痛いんか」
うちはだまってくびをふるだけ
つぶやきながら仕度をしてくれる母は
「さあ この角の家からおどろうかのう・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
あとざすりするうちの背中(せな)を
かるうにおした
〆お家も繁昌(はんじょう)と祝いましょう
思いきって云うてみた
声がふるえた
駒の赤い手綱をふりあげた手もふるえる
〆春のはじめにゃ春駒なるぞ
夢に見てさえ良いとや申す
よつ竹に調子をあわせて母は唄う
〆こなたのお座敷ながむれば
鶴と亀とが舞をまう
はやしをいれて踊りつづける
「可哀想にのう 遊びたいさかりじゃが・・・・・」
三銭のひねりをにぎらせた おばあさんもおった
「お通りっ!お通りじゃっ!」
塩を投げつけた おっつぁんもおった
踊りつかれて腹がへった
〆こなたの奥さんじょうきりょう
はやす声がかすれてくる
「元気のええ駒にならにゃ」
母はおこるけど
〆右の手綱が三尺三寸
〆左の手綱も三尺三寸
唄う母の声もかすれとった
母の背(せな)で乳のみ子がほそうい声で泣きだす
しっかり泣いてくれ
お前が泣いてくれたら ひとやすみでけるんじゃ
もっと泣いてくれ
夕やみがそこまで来ても 踊った
銭をもろうた
米や餅で袋がおもとうなったが・・・・・・・
なんにもいらん!
何里も 何里も夜みちをもどる
「お母ちゃん あしたも行くん
もう 春駒なんか行きとうない
餅なんか食わんでもええ
もう行きとうない!」
「…あと一日だけじゃ がまんせえ」
「父(てて)さんにのう……
せめて父さんに
ちいとでも 仕事(もうけ)さえありゃあ
おまえらにまで なんぎはさせんのに……」
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※後編の、見よう見まねによる 門付芸の口上での
“春駒”とお志げの詩の説明のさわり(書き直し中)をupします。
一の段
シャンシャカ シャカシャカ テンツクテン
めでためでたや春駒なんぞ 夢に見てさへよいとや申す
年に一度の春正月に 国はあきのくに広島で
カカ様が唄を娘が踊りを 馬の頭なんぞを持って
年始の祝言をことほいでまわる 門付芸(かどづけげい)そは春駒なり
母娘は衣装をいかなるふうに 纏っておったかと言うならば
着物尻からげに赤いおこし ちょいと見せて
紫色の布で頬かぶり 三尺たすきのあまりを垂らす
手はどうかと見てやれば 紫の手甲をつけておって
足はどうよと見てやれば 赤い鼻緒のワラ草履ばき
持ち物は何と見てやれば 春駒と呼ぶ馬の頭
春駒の手にする辺りにゃ 一文銭と鈴を通した金輪
踊るとシャンシャン音鳴りて その春駒にも三~四尺の紫の布
被差別の身は一生 消し去れぬことなれば
せめて正月露の間程でも 非日常の神に変身させてくだしゃんせ
も早や支度もでき上がり 時は一九三二年頃の
お志げが数えで七つから十 正月二日の八ツ半(午前三時)に
起された外は 冬の凍てつく寒さと暗さ
星の明かりと母の手が頼り お隣松永町まで十五(㎞)
更に福山市まで二十五(㎞) 町のはずれの神社で朝に
冷えた握り飯一つの朝食 さてと門付けして歩くが
近所の子ども衆寄ってくれば 「春駒じゃ春駒が来た」と冷やかす
お志げは恥ずかしさと寒さで 思うように手足動かず
思い切って声出し踊ると 十軒廻れば五・六軒
断られ塩をまかれ その上ここ二、三年
満州事変の始まりで 華美なるものは取締られ
警官を見れば物陰へ 隠れ気兼ねし門付けを
終わってカカ様と暖かいうどん お志げは一生忘られず
さても一座の上様へ まだ行く末は程長い
下手の長読み飽きがくる 一息入れて次の段
(龍馬、午年生まれ、六歳😹)
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いやもう 御愛想のないことでございました
夜も更けて参りましたさかい
足元に気をつけてお帰りくださいませ