✧チキンバターカレーのエチュード✧
✧チキンバターカレーのエチュード✧
(一)
ぽろんぽろん
ぽろんぽろん
ぽろんぽろん
ヒラナリ君(平成君)がある日
マリヤさんのピアノに近寄って来ました
以来
ぽろんぽろん
ぽろんぽろん
ぽろんぽろん
が
マリヤさんの
おしごとになりました
ぽろんぽろん
ぽろんぽろん
ヒラナリ君の言葉を
鍵盤に打ちこみます
ぽろんぽろん
ぽろんぽろん
ヒラナリ君の言葉を
ボツにできる人はいません
(二)
アキカズさん(昭和さん)が
ヒラナリ君のお迎えにやって来ました
ヒラナリ君が階段の上にすがたを現して
続いて
ミクたんが先に
降りてきました
ヒラナリ君が
降りてきました
ミクたんは
また戻って
今度は階段の十段目から“根性飛び”で飛び降りてきました
ヒラナリ君は
げらげらげらと笑いました
ミクたんは
また戻って
階段の十段目から飛び降りてきました
それを見て
ヒラナリ君は
げらげらげらと笑いました
また戻って
階段の十段目から飛び降りてきました
一瞬、目が光ると
階段を三段目まで上って
そこから
足から
飛び降りずに
胸から
スリスリスリと
なだれ落ちていきました
(三)
階段の三段目から
胸からなだれ落ちていきました
顔と服がちょっと白くなった
ヒラナリ君が立ち上がると
階段の十段目から
飛び降りてきました
階段の三段目から
なだれ落ちてきて
階段の十段目から
また飛び降りてきて
階段の三段目から
またなだれ落ちてきました
そして気づいたら
階段の騒々しさは
消えていました
待てども待てども
飛び降りてこなくなり
待てども待てども
なだれ落ちてきません
ミクたんは
家と隣のブロック塀とのあいだの
わずかな隙間を
「チキチキバッタ 出てこーい」
と言って
奥の奥まで進んでいったのでした
一瞬、目が光ると
ミクたんに続いて
家と隣のブロック塀とのあいだの
わずかな隙間を
入っていきました
ヒラナリ「げらげらげら」
ミク「チキチキバッタ、出てこーい」
ヒラナリ「げらげらげら」
ミク「チキチキバッタ!」
ヒラナリ「げらげらげら」
ミク「チキチキバッタ!」
ヒラナリ「チキンチキンバター」
マリヤ「ぽろんぽろんぽろん」
マリヤさんが
ヒラナリ君の言葉を
鍵盤に打ちこみました
ミク「チキチキバッタ!」
ヒラナリ「チキンチキンバター」
マリヤ「ぽろんぽろんぽろん」
ミク「チキチキバッタ!」
ヒラナリ「チキンチキンバター!」
マリヤ「ぽろんぽろんぽろろん」
ミク「げらげらげら」
ヒラナリ「げらげらげら」
二人は笑いながらつぎつぎと
家と隣のブロック塀との
わずかな隙間から
出てきて
続いて 階段の上から
ピアノの白鍵と黒鍵が
手をつないで降りてきて
ミクたんが
階段に寝ているピアノの白鍵と黒鍵の上を
足で弾いて跳んで跳ね上がり
ヒラナリ君が
階段に寝ているピアノの白鍵と黒鍵の上を
胸でスリスリスリとなだれ落ち
ミクたんが
ピアノの白鍵と黒鍵を 足で踏み鳴らして
主旋律を引き
ピアノの白鍵と黒鍵を 胸で打ち鳴らして
伴奏を引き
ウッドペッカーの傘立てが
ゥエエエーエー ゥエエエーエー ゥエエエエエエエエエエエエエ と大きな声で鳴くと
(六)
ミクたんの紫色のズボンが
オレンジ色のスカートに履き変わり
オレンジ色の
ミクたんのママの車が
月明かりの中 お迎えにやって来て
ミクたんが
バイバイも言わずに
素早く 助手席に潜り込み
ミクたんが行ってしまうと
ピアノの白鍵と黒鍵は 手をつないで
階段をかけおり道路へ逃げて
マリヤさんが
掛け降りてきて
鍵盤たちを追い
ヒラナリ君も
一瞬、目が光ると
鍵盤たちとマリヤさんを追いかけ
マリヤさんは ピアノの白鍵の手を引いてぶじ連れかえり
ヒラナリ君は ピアノの黒鍵の手を引いてぶじ連れかえり
スリスリスリと白鍵と黒鍵は階段の上まで引き上げられて
階段の上の扉の向こうでは
中のエレクトーンや木琴も
鍵盤を浮かせて踊り回り
マリヤさんが扉を開けると
エレクトーンと木琴の鍵盤は
元の位置に戻って残念そう…
ヒラナリ君は
待てども待てども
降りてこなくて
ヒラナリ君は
待てども待てども
降りてきません
✧
アーケードのイルミネーションが
キラキラキラと輝き
窓の下では
カレーの具材と
小さなケーキと
大きなオモチャを
アキカズさんが
抱っこ紐に
ヒラナリ君を入れて
信号待ちをしていました
マリヤさんは
ピアノに鍵をかけて
電気を消して戸締りをしました
みなさまもあったかいイブを
おすごしください✧(*´ω`人´ω`*)✧
お読み頂き
どうもありがとう
ございました✧