お疲れ様です。

金聖雄(キム ソンウン)監督の『極友』を観たせいで、
【主人公の袴田巌さんは、私の友だちの関係者の伴侶の友だちです】などと自慢する図々しいオンナになってしまった私です(前から)。詳しくは前回の記事をご覧ください。
冗談はさておき、登場人物の一人一人に愛着が湧き、男惚れしてしまうほど、ほんとにいい映画でした（性別）。

では、早速ですが、昨日予告した【冤罪3部作】『SAYAMA みえない手錠をはずすまで』、『袴田巖 夢の間の世の中』、『獄友』の制作者、金聖雄監督のトーク(2019/03/16)のメモ起こしを、心を込めてUP致しますm(__)m

（全文）

「冤罪がここ4～5年のテーマになってしまいました。きっかけは狭山事件の石川一雄さんにお会いした事です。事件の不当性を訴えるようなものではなく2人のラブストーリーとして冤罪に巻き込まれながらどんな風に生きているかを撮影した映画SAYAMAみえない手錠をはずすまでを2013年に作りました

その中で「極友」の4人と最初に出会いました。またお会いする機会があって蓋を開けてみればみな懐かしそうな話を楽しそうにします。4人は同じ刑務所でニアミスしていた。そして石川さんと袴田巌さんは同じ拘置所の隣の隣の房にいて“いわちゃん、かずちゃん”と言い合った1審死刑判決同志。将棋大会の話。

4人は集まっても自分たちがどれだけしんどかったのかの話はしません。石川さんが晴れたら政治に出ようよ。むしょぞく（刑務所の務所）で出ようぜ。そんな楽しい話をします。失ったことばかりでなくその中で得たものがあると。どうしてこんなに前向きなのかを映画の中に落とし込めたら…前向きも含めて映画を観た人に伝えていけて考えるきっかけになれば…。

私のきっかけはジャーナリストでも運動家でもない一介の映像職人として石川一雄さんに出会ってなんて素適なんだから始まりました。その中でニアミスした4人のそれぞれのキャラの面白さを知りました。その人たちがシャバに出てそれに立ち会いました。これを撮らないでどうするんだと。

同時期の風立ちぬ(2013)君の名は(2016)万引き家族(2018)に負けないように沢山の人に観て貰う事が一つの役割かなと思います。感情的な話をしましたが実は心根としては大まじめで啓発と思わずにじっくり楽しんで頂けたらちゃんと1本の映画として観て頂けたらと思います

※金聖雄監督の映画作品の製作年
　SAYAMA みえない手錠をはずすまで（2013）
　袴田巖　夢の間の世の中（2016）
　獄友（2018）

金監督(上映会終わって)

「いい映画でしたね!あんまり言ってくれないので自分で言うようにしているんですけれども(笑)なかなかいい映画だと思うんですけれども『SAYAMA みえない手錠をはずすまで』は毎日映画コンクールドキュメンタリー映画賞を、『獄友』は今回キネマ旬報文化映画第5位を受賞しました

映画には映画の役割があるかなと思います。僕の立ち位置は、何とかいい映画を作ることでその結果あと押しになるといいなと思いながらやっています。石川さんと2010年に出会い2014年3月27日に袴田さんが釈放されて本当に衝撃的でした。もちろん弁護団に結集した法律家の後押しがあったからですけれども

僕はTVで見ていてショックが大きかった。48年間明日死刑執行されるかもしれない中、どういう風に過ごしていたのか想像が及びませんでした。袴田さんが何を見ているのかがわかりませんでした。その後、直接お会いして撮影が始まりました。最初の半年間は袴田さんは殆ど家を出る事はなく家の中を歩き回るだけでした。

楽観していたけど拘禁症という疾患がなかなか治りません。5年間一緒に過ごす中で48年間は長かったのかなとj実感しましたとお姉さんが言われました。とはいえ半年後から袴田さんは変わってきました。袴田さんは将棋の名人で僕は袴田さんの家へ行くと毎回将棋をしてました。今75戦75敗中です

僕が勝てるのはジャンケンだけと言われています。袴田さんはパーしか出さないんです。弁護団の小川先生は勝っちゃって怒られてました。袴田さんは姪っ子さんがいて毎年お正月に千円あげるんです(今は1万円だそうです)｡最近は小さい子を見つけると5百円あげる。事情を説明すると喜んで受け取ってくれる

袴田さんは食べたいとき食べて寝たいとき寝て甘いものもたっぷり食べて温かいお風呂に入って普通の日常を取り戻す中で少しずつ変化していきました。
袴田さんは毎日死を意識して生きる中で色んな意味で耐えきれず自分がトップになって事件を終わらせるという世界を創り出した…今もあります。
でも半分くらい日常会話もあり笑いも起こります。行ったり来たりを彷徨っていると…
袴田さんを通して死刑を考える事は凄く意味があると感じます。

去年の6月11日、高裁の再審を認めない決定が出ました。僕は喜ぼうと思って撮影に行ってました。二人出てきたら良い知らせなんですが一人しか出てこなかったんです

僕は怒りをどこへぶつけていいのかという初めての経験をしました。姉の秀子さんにどう声をかけていいのか悩みました。でも逆に秀子さんから「何をメソメソしているのよ。私はこれくらいじゃへこたれないわよ。これまで50年闘ってきたのだから、まだまだ闘うだけよ」と励まされました。通じて感じるのは

理不尽極まりない中をくぐり抜けて前を向くしかないと生きてきたわけですけどもみんな言うんですよ「不運だったけど不幸じゃない」と。みんなに共通して思う事は、あってはいけないが理不尽を受け入れて前を向き生きていく姿にはその人しか持たない輝きがある。彼らの生き様自体が『新証拠』であると。

ニュースで僕たちが見る事件の冤罪被害者の一人一人としてではなくそれを引き受けていく一人一人としてなんとかあぶり出す事ができれば、揺るぎない証拠になると思います。前は冤罪も死刑執行も遠くて自分から近づいていきませんでした。今はまた収監、そんな事があってよいのだろうかと心から思います

撮影中、静岡地裁の再審開始決定のニュースが入ってきて、心から嬉しいんだけれども複雑な表情をしたのが極友でありそのことを一番理解しているのも極友でした。普遍的な友情、愛、家族に想いを馳せて貰えると嬉しいと思います。

エンディングに流れる主題歌は谷川俊太郎さんに手紙でお願いしたら快く
引き受けてくれました。『真実･事実･現実 あることないこと』は27人のミュージシャンが手弁当で参加してくれて出来上がりました。今度の憲法集会では｢獄友イノセンスバンド｣も出演する予定です。
映像を通して沢山の人に観て貰うことで、綺麗な言い方ですが、つながっていけたらいいなと思います。

一部の人だけががんばるでは司法はなかなか動きません。やっぱりそれを動かしていくには、自分も含めた一人一人がどう一歩を踏み出せるかだと思います。ありがとうございました」（ドキュメンタリー映画『極友』金聖雄監督）

※追記です

冤罪３部作(『SAYAMA みえない手錠をはずすまで』、『袴田巖 夢の間の世の中』、『獄友』)の今後の上映会スケジュールをお知らせします。

本日もご訪問どうもありがとうございました(o^―^o)